D_MIX(@D_MIXing)です!
今回は「歌ってみたのMIX(ミックス)」について、一般的なMIXの違いと併せて解説していきます。
『MIXってどういうことをするの?』
『MIXはそもそも必要なの?』
『プロアーティストもみんなやってるの?』
このような疑問にお答えしていきます!
MIXとは?

MIXという言葉は、日常生活ではあまり聞き馴染みがないかと思います。
現在MIXと呼ばれる作業には大きく分けて2種類存在します。
一つは、通常のMIX。
もう一つは、正式な名称は無いのですが「歌ってみたMIX」や「ボーカルMIX」と呼ばれることが多い作業です。
今回の記事では「歌ってみたMIX」で統一したいと思います。
通常のMIXは、
複数の楽器やボーカル音源をバランスよく混ぜ合わせて1つの音楽作品にすること
を指します。
このMIXは「ミキシング」や「ミックスダウン」とも呼ばれます。
混ぜるといってもとてつもなく奥が深く、答えが存在しない作業になります。
そのため、プロとしてMIXを仕事にするためには、音楽的な経験とセンス、膨大な知識、そしてクライアントとのコミュニケーション能力も要求される作業になります。
一方で歌ってみたMIXは、
ボーカル音源と”既にMIXされた”inst(カラオケ音源)を混ぜること
を指します。
したがって、通常のMIXよりも難易度は大きく下がるので、初めての方でもチャレンジしやすくなる傾向もあります。
ただ、歌ってみたMIXには、通常MIXとは異なる難しさも存在してきます。
例を挙げると、下記のようなものがあります。
・ボーカルしか細かく調整することができないので、音作りの幅が狭まる
・inst音源自体のMIXのクオリティにも左右される
・家で録音される場合が多いので、音質面に問題があるデータを扱うことが非常に多い
・音楽はあまり詳しくない依頼者さんも多いので、完成イメージを把握するのが難しい 等
このような違いがあるので、結果として求められるスキルも多少異なってくるのが事実です。
「MIXをすることは悪」という意見を時々SNS等で見たりするのですが、一切悪いことではないので依頼等される方も安心してMIX依頼を行っていただければと思います。
ボーカルエディット
MIXと同じタイミングで行う作業にボーカルエディットという作業があります。
ボーカルエディットでは主に下記の作業を行います。
- どのテイクを使うか選択するボーカルセレクト
- 歌のピッチ(音程)補正
- 歌のタイミング補正
よく、「歌ってみたMIX=ピッチ・タイミング補正」と誤解されていることが多いのですが、
あくまでもMIXは
複数の楽器やボーカル音源をバランスよく混ぜ合わせて1つの音楽作品にすること
であるため、しっかりと覚えておきましょう!
歌ってみたMIXの場合、基本的にはボーカルエディットも込みで受けている方がほとんどです。
逆に、通常のMIXはボーカルエディットはオプション料金となることが多いので、依頼時にトラブルの無いようしっかり覚えておきましょう!
ボーカルエディットでは、具体的にどのようなことを行うのか1つずつ解説していきます。
ボーカルセレクト
こちらは、録音した複数のボーカル音源の中から一番良い物を選定する作業になります。
基本的に録音時は一発録りではなく、セクションごと(Aメロ、Bメロ、サビ等)に分けて何本か録音を行うことが多いです。
その中から最も良いテイクを選び、繋ぎ合わせることにより1つの歌データが完成します。
通常は録音を担当する「レコーディングエンジニア」と「ボーカル」がコミュニケーションをとりながら数本に絞り、
その後MIXを行う際にベストの1本を選択するという流れになります。
歌ってみたの場合は、ボーカル本人が家で録音をすることが大半だと思うので、基本的に歌唱者さん自身で行うケースが多いです。
ピッチ補正
こちらは、ボーカル音源を聴いて本来のピッチ(音程)とズレている音を補正する作業です。
音程とピッチは似ているようで厳密には違う意味になります。
具体的には、下記のように定義されています。
- 音程・・・音と音との距離のこと。
- ピッチ・・・音の高さのこと。
どんなに歌が上手な人でもピッチが100%合うことはほぼありません。
そのためプロのアーティストでも、量の差はあれど必ずと言っていいほど行っている作業になります。
タイミング補正
これはボーカル音源のタイミング(リズム感)を補正する作業です。
タイミング補正によりグルーヴ感と言われる音のノリの良さ、心地よさを生み出します。
この音質劣化はピッチやタイミングがズレているほど大きくなってしまい、本来の自分の声とは全く異なる変な声になってしまいます。
特にタイミング補正は、少しの補正でも大きく音質劣化してしまいます。
そのため、これらの補正は無限にできるわけではないので、できる限り録音の段階で合わせられるようにしましょう!
歌ってみたのMIXで行う作業
歌ってみたのMIXでは具体的にどのような作業を行っているのでしょうか?
全てを詳細に挙げると1つの記事では書ききれないので、今回は大まかに3つの作業に区切って紹介いたします。
大まかに挙げると下記のような3つの作業になります。
- 音量調整
- 定位(パン)調整
- 音の質感・空間調整
音量調整
これはそれぞれの音源(カラオケ音源、メイン、ハモリ、コーラス等)の音量を調節し、全体のバランスを整える作業です。
音量バランスが崩れていると全体的に声が小さくて聴こえづらい、声が大きすぎて浮いて聴こえてしまうなどの現象が起こります。
また、多くの場合Aメロ、Bメロ、サビで音量が大きく異なっており、そのままだとすごく聴きづらい音源になってしまいます。
そのため、コンプレッサーと呼ばれる機材を用いて音量の大きい部分を圧縮させ、全体の音量差を減らす作業も行います。
定位(パン)調整
定位(パン)とは音の位置のことです。
基本的な構成としてメインボーカルはセンターから聴こえるように、ハモリやコーラスは左右から聴こえるようにします。
全てセンターに配置してしまったり、極端に左右に振ってしまうと聴きづらい音源になってしまいます。
そのため、少なからず知識やセンスが必要になってくる部分になります。
音の質感・空間調整
同じMIXと言っても、いつも同じ作業を行うわけではありません。
楽曲のジャンルやボーカルの声質によって音の質感や空間の大きさをどのようにするかを調整しなければなりません。
バラードとロックを全く同じやり方でMIXしてしまえば、違和感が起こってしまうことは容易に想像がつくかと思います。
こういった違和感を発生させないために、質感・空間調整はとても重要な要素となります。
具体的な方法としては、イコライザーや、ディストーション、リバーブ、ディレイをはじめ、様々な処理を行うことにより、曲の雰囲気やinst音源に馴染むようにします。
例えば、同じイコライザーでも様々な種類や特性のものがあったりと、非常に奥が深い要素でもあるため、とにかく勉強が必要になる工程でもあります。
MIXの必要性


こんな声もあるかと思いますがこれは必ず行うべき作業です。
行う行わないでどのような違いがあるのか聴いてみると明白かもしれません。
元スタジオ所属の赤沢君に、MIX前後のサンプルを作ってもらったので聴いてみましょう。
・MIX前
・MIX後(ボーカルエディット、各種調整、ハモリ生成後)
いかがでしょう?
MIXをすることにより音量バランス、声の馴染み等が聴きやすくなり格段にクオリティが上がったと思います。
通常、音楽作品として投稿や配信をする場合、MIXの後にマスタリングという作業を行います。
マスタリングでは、下記のような作業を行います。
「投稿、配信先に合わせて音圧を調整する」
「最終の細かいノイズチェックを行う」
「音の質感含め最終の仕上げを行う」
「アルバムの場合、曲間の秒数を決める」
歌ってみたのマスタリングでは、主に「投稿、配信先に合わせて音圧を調整する」を指している場合が多いので、こちらも念のため覚えておくといいかもしれません。
マスタリングもMIXとは別の作業になりますが、歌ってみたMIXの依頼を受けている方は、マスタリング込みで受けている方が多いです。
・マスタリング後(※音量注意)
マスタリングをすることにより音圧が上がり、迫力が増して聴こえるようになったと思います。
マスタリングまで行うことで、CDやストリーミングサービスに最適な状態で聴くことができるようになります。
今後MIXをやっていきたい方や、依頼をされる方もマスタリングまでを知識として身に付けておくことをおすすめします!
まとめ
以上が歌ってみたMIXの一連の流れとなります。
記事の中で説明した通り、MIXの有無によって作品のクオリティが格段に上がります。
せっかく頑張って録音した音源をより良い状態で公開するためにも、MIXは必ず行うようにしましょう。
自分でやってみたい場合以外は、プロにやってもらうのが一番だと思います。
Shated StudioでもMIX依頼を承っておりますので、必要な際はお気軽にお問い合わせくださいませ!
それではまた!