D_MIX(@D_MIXing)です!
突然ですが、皆さんはMIX師さんに ハモリ を作ってもらったことはありますでしょうか?
ハモリの作成はとても便利なもので、
ハモリが歌えなくても、主旋律さえ歌っていれば作品にハモリを入れることができてしまいます。
これを使えば、どんな曲でも簡単にハモリを入れることができるので、実際に多くの活動者さんもご利用されています。
しかし、
ハモリ作成で、できないこともあるのはご存じでしょうか。
魔法のような技術にも、限界があります。
この限界のボーダーラインを知っておかないと、作品のクオリティがガクッと下がってしまったり、MIX師さんとトラブルになってしまうこともあります。
そうならないためにも今回は、
『ハモリ作成の知られざるデメリット』
について、実際の音源を交えながら解説して参ります!
キーワードは、
『音質劣化』です。
知っておくだけで差がつくポイントでもあるので、是非最後までお付き合い頂けると嬉しいです!
その方が、MIX時の音作りの幅も広がり、作成による音質劣化も無くなるため、最終的な作品のクオリティは良くなります!
ハモリ作成とは?
まず、ハモリ作成とはいったい何なのでしょうか?
ハモリ作成とは
ハモリを疑似的に作りだすこと を言います。
これによって、ハモリを実際に歌わなくても、作品にハモリを入れることができるようになります。
音程補正ソフトは『Auto-Tune Pro』や『melodyne』等が有名です。
私自身も両方所持しており、シチュエーションによって使い分けて使用しております。
このような音程補正ソフトを使用し、ハモリ作成を行って赤沢君の歌をMIX・MSTしてみました!
しっかりとハモリの入った作品になっているかと思います。
このように、ハモリ作成を利用することで
- 歌わなくていいから楽だし時短になる
- 主旋律とハモリのタイミングがぴったり揃う
- ハモリがわからなくても作品に入れられる
といった恩恵を受けることもできます。
実際、このハモリ作成には賛否両論があるのですが、私個人の意見としては
ハモリ作成は全然アリだと思います!
現に、歌ってみた動画を出している方の多くが、ハモリ作成を使用されていることも事実です。
なので、遠慮なく使って頂ければと思います!
ただ、デメリットが存在することも事実です。
次の項では、ハモリ作成のデメリットについてまとめています。
ハモリ作成のデメリット
ハモリ作成を語る上で、一番外せないデメリットがあります。
それは、今回のキーワードにもなっている、
『音質劣化』です。
ハモリを作成することで、必ずこの音質の劣化が発生してしまいます。
そして、主旋律から音程が離れれば離れるほど劣化は酷くなります。
試しに様々な 度 数の異なるサンプル音源を作ってみたので、聴いて頂ければ違いは一目瞭然かと思います。
※変化がわかりやすいようにするため、音程以外の処理は一切変えておりません。
いかがでしょうか?
素音源から音程が離れるにつれて、劣化が大きくなっていることがわかると思います。
主旋律のボーカルと混ぜてしまえば、3~4 度くらいの変動であれば使えると思いますが、それよりも変動が大きくなってくると基本的に作品として使うのがおすすめできない状態となります。
また、どちらかというと、
下ハモリの作成の方が音質劣化が大きくなる傾向があります。
私自身これまで1,000件以上のMIXを行ってきましたが、所感としては
- 基本的に上下ハモリ作成は3~4度まで
- 上ハモリに限って、ジャンルによっては5度以上も可
- あえて加工感を出す場合を除いて5度より下の作成は避けた方が良い
- がなり声を使っている場合は、ハモリも別途歌った方が良い
この範囲を超えてしまうハモリを入れたい場合は、実際に録音をすることをおすすめします。
ロックやアップテンポで楽器数が多い盛り上がる曲 → 作成できる範囲広い
バラードやピアノ伴奏などの楽器数が少ない静かな曲 → 作成できる範囲狭い
というように覚えて頂ければ間違いありません。
また例外として、主旋律でがなりを使用している場合は、
がなっている場所だけでもハモリを録音することをおすすめいたします。
ハモリがわからない場合は、『がなっていない』声で主旋律を録ったデータも送っておけば問題ありません!
実際にハモリを録音をした方が良い場所
ここまで来ると、何となくわかってきている方も多いと思いますが、
簡単にまとめると、下記の通りです。
- 主旋律から1オクターブ離れたハモリ(ユニゾン)は ”必ず” 録音する
- がなり声を使っているところも”必ず” ハモリを録音する
- 音程が離れている場所は、その部分だけでもいいから録音する
- バラードやINSTが静かな場所はできる限り録音する
例えば、『ヴァンパイア / DECO*27 様』 の冒頭部分の場合
0:00~0:12の冒頭部分のメロディラインを抜き出してみるとこのようになります。
こちらは下ハモリのみになります。
0:00~0:05までは主に3度下のハモリであるため、問題なくハモリを作成できます。
ただ、0:05~0:12の「悪い子だね~イケルヨ」は主に6度下のハモリになってくるため、作成する場合はかなり音質の劣化が激しくなってしまいます。
そのため、冒頭部分は0:05~0:12の「悪い子だね~イケルヨ」のハモリを本家通りに入れる場合は、絶対に録音をした方が良いです。
という具合で、離れているところを見つけたら録音をしていくといいのですが、、、
正直、本家動画を聴いただけで度数の離れ具合を判断するなんて難しいですよね…。
そもそもそれが聴きとれる人は、ハモリを全部歌えてしまうと思います。
なので、ハモリが苦手で作成をするかどうか悩んでいる方は、
↓
とにかく頑張って全部録音してみる
↓
心置きなくハモリ作成
この心構えで録音に挑めば問題ないかと思います!
とにかく頑張ってみてあまり上手く歌えなかったとしても、使用可能な部分だけを切り取って作品に使うことも可能なので、相談という形でMIX師さんにひとまず渡してみましょう!
ただ『ハモリ作成のデメリット』の項で説明したように、音質劣化は激しくなり、違和感は必ず発生してしまいます。
『音質』なのか、『本家の再現度』なのか。何に重きを置くかで処理の仕方は大きく変わってくるので、ハモリ作成を依頼する場合は、この部分もしっかりと頭に入れて依頼をするようにしましょう!
最強の裏技
最後に、どんなハモリでも本家通りに入れてもらうことができる最強の裏技をご紹介します。
ここまで、ハモリ作成のデメリットや、それを踏まえて録音をした方が良い部分を紹介してきましたが、
「そもそも録音するべき場所の判断が難しい!!」
「音がわからない!!」
というパターンも少なからずあるかと思います。
その場合は、
投稿したいキーの+5と-7のキーも録音しておきましょう
ちなみに、本家音源のキー変更は『聞々ハヤえもん』というフリーソフトがおすすめです!
http://hayaemon.jp/
インストールをして起動したら、下の画面が出てくるので赤丸で囲まれた『音程』をいじるとキーが変更できます。
例:#5.0 → キー+5、♭7.0 → キー-7
必要であれば『ファイル』→『保存』でキー変更された音源を書き出すことも可能ですのお試しください!
そのため、キー変更をした楽曲のMIXを依頼する場合は、
INSTのキー変更も含めてMIX師さんに依頼するようにしましょう!
MIXで使える『音質劣化を最低限に抑えるキー変更の方法』は、こちらをご覧ください!
D_MIX(@D_MIXing)です!歌ってみた動画を投稿する際、「楽曲のキーを変更して歌いたい!」ということはよくあると思います。カラオケなどでは、キーを簡単に上げ下げすることができますが、歌ってみたとなるとそうはいきません。更[…]
先ほどのヴァンパイアを原キーで歌うとすると、下記のようになります。
- ヴァンパイアを原キーで録音する
- 本家原キー音源をキー変更して「+5」と「-7」の音源を作る
- +5にした音源と同じ音程で録音をする
- -7にした音源と同じ音程で録音をする
- (オクターブが異なるハモリがある場合はその録音も忘れずに!)
- 録音した「原キー」「+5」「-7」のボーカルデータをMIX師さんに渡す
・1オクターブ上 = キーは +12
・1オクターブ下 = キーは -12
になります。
こうすることで、
ほぼ全てのパターンのハモリを作ることが可能になります!
また、この技はいろんなパターンに応用することができます。
歌いたい曲に3度上のハモリを入れたい場合は、上で紹介したキーを「+3か4」に変えて録音すればOKです。
そうすることで、主旋律のボーカル音源からハモリを作成するよりもずっと良い音質でハモリを入れることが可能になります。
ハモリが苦手でどうしても歌うことができないけど、
「どうにか本家通りにハモリを入れたい!」
「低劣化でハモリを入れたい!」
という方は是非お試しください!
まとめ
いかがでしょうか?
今回の内容をまとめます。
- 基本的に上下ハモリ作成は3~4度まで
- オクターブが異なるハモリ(ユニゾン)は ”必ず” 録音する
- 音程が離れている場所やINSTが静かな場所は、その部分だけでも録音する
- バラードはできる限りハモリも録音した方が良い
- ハモリを本家通りにしたい場合は、できる限り頑張って録音する
ハモリ作成について書いてきましたが、やはり実際にハモリを録音するに越したことはありません。
ハモリ作成を依頼する場合は、メリットやデメリットをしっかり踏まえた上で、依頼をしましょう!
それではまた!