D_MIX(@D_MIXing)です!
今回は、多くの宅録ユーザーを悩ませる、部屋の反響音『部屋鳴り』について焦点を当てていきます。
私自身、これまで数多くのMIXを担当いたしましたが
「とても素敵な歌声なのに、録り音が悪くてもったいない…」
という事例にたくさん遭遇してきました。
そして、その原因の多くが部屋鳴りによるものです。
この部屋鳴りは、MIXで綺麗に取り除くことができません。
つまり、
完成音源のクオリティを上げるためには、部屋鳴りを抑えることが必要不可欠です。
下記のような悩みを抱えている方も、部屋鳴りが原因となっている場合が多いです。
- 声がスカスカな感じがする
- 声がダブって聴こえる
- 声の輪郭がぼやけている
- 膜が張った感じの音になる
では、この部屋鳴りを抑えるには、具体的に何を行ったらよいのでしょうか?
今回は、その具体例とサンプル音源を交えて徹底的に解決していきたいと思います!
録り方1つ工夫するだけで部屋鳴りは劇的に改善しますので、是非今回の内容をご参考ください!
それでは、さっそくいってみましょう!
部屋鳴りとは?
部屋鳴りとは、歌う際等に発生する部屋の反響音のことを言い、
この反響音が、ボーカルの歌声と一緒に録音されてしまっている状態のことを
「部屋鳴りが入っている」
と言います。
この現象は専門的には「フラッターエコー」と言いますが、歌ってみた界隈だと「部屋鳴り」と呼ばれることが多いので、今回は「部屋鳴り」で統一して解説していきたいと思います。
そしてこの部屋鳴りが多く入っていると、冒頭で紹介した問題に加えて、下記のようなデメリットも発生します。
- 声が浮いてしまう(馴染まない)
- 複数人で歌う時、部屋鳴りが多い人だけ違う空間で歌っているように聴こえる
- 大抵の場合MIX依頼時に理想の音にしてもらうことが困難
繰り返しになりますが、この『部屋鳴り』はMIXで綺麗に取り除くことは不可能です。
今は、iZotope ( アイゾトープ ) / RXシリーズといった、あらゆるノイズを減らしてくれる超高性能なソフトも登場していますが、やはり完全に取り除くことはできません。
そのため、全宅録ユーザーは、
録音したデータに入ってしまう部屋鳴りを最小限に抑えること
が最重要になります。
部屋鳴り対策
録音した音源に部屋鳴りが入らないようにするためにやるべきことは、
- 録音環境を改善する
- 適切なマイクの使い方をする(マイキング)
この2つに尽きます。
マイキングについては聞きなれない方も多いかと思われますので、まずは順を追って説明していきたいと思います。
それぞれ、どのようなことをするべきなのか実際に見ていきましょう!
録音環境を改善する
まず大前提として、一般的な家で録音をする以上「部屋鳴りをゼロにすること」は不可能です。
完全に部屋鳴りを無くすのであれば、レコーディングスタジオのような設備を作る必要がありますが、現実的ではないですよね…。
そのため、ここでは
「身近なアイテムと簡単な工夫でいかに部屋鳴りを減らせるか」
に焦点を当ててまとめていきたいと思います。
まず、部屋鳴りが起こりやすい録音環境のパターンとして挙げられるのは下記の通りです。
- 部屋に物が少ない
- 床全体がフローリング
- 衣類や布などが少ない部屋
そして、これらを改善する手っ取り早い方法として、下記のようなものがあげられます。
- 部屋に衣類や布などをとにかくたくさん置く
- 床全体にマットやカーペットを敷く
- マイクや自分の後ろに、布団やバスタオルをかける
なかなか難しいですが、下の画像のような形でバスタオル等で囲えたらベストです。
これらを実践することで、
少なからず何もしてなかった時より部屋鳴りは改善されます。
また、更に万全を期すなら、下記画像のようなリフレクションフィルターというアイテムをおすすめします。
部屋鳴り等のノイズからマイクをある程度守ってくれる役割を果たしますので、録り音が改善されることは間違いありません。
現在の録音環境に悩まれている方は、思い切って購入することをおすすめします!
適切なマイクの使い方をする(マイキング)
恐らく、多くの方が「マイキング」という言葉に馴染みがないかと思われます。
- マイクとの距離や角度
- 録音するマイクの種類選び
- マイクをどの場所に設置するか
このような、録音におけるベストなマイクのセッティングを行うことを総称して「マイキング」と言います。
そして、部屋鳴りに関しても、このマイキングによって大きく音が変わってきます。
基本的に、なるべく部屋鳴りを入れないためには、
- マイクと口の距離をできる限り近づける
- マイクの設置場所は壁から遠ざける
- 部屋の角に向けてマイクを設置する
この3つが大事になってきます。
あくまで「部屋鳴りを減らす」ことに重点を置いているので、レコーディングスタジオ等の部屋鳴りが抑えられている部屋でのマイキングはこの限りではありません!
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適切な入力レベルと一緒に、こういう場合の奥の手も解説しています!
次の項目では、実際に録音環境やマイキングで部屋鳴りがどのように変化するかを、実際に録音したサンプル音源と共にまとめていきます。
検証実験
【歌唱者】
・D_MIX studioスタッフ ゲロリアン 君
※本業はギタリストなので歌のクオリティはご容赦を(笑)
【楽曲】
・KING Kanaria 様
→https://youtu.be/cm-l2h6GB8Q
【使用機材】
・マイク
→audio technica / AT2020
・インターフェース
→ROLAND / Rubix22
・ポップガード
→STEDMAN / PROSCREEN 101
・マイクスタンド
→CLASSIC PRO / MSB/BLACK ブームマイクスタンド
今回使用した機材は、初心者の方におすすめの機材でもあるので是非ご参考ください!
【録音環境】
広さ:約10畳のリビングルーム
床:フローリング
布・衣類:窓にあるカーテン のみ
5畳以下の部屋や、簡易防音室等の比較的狭い空間の場合、今回のサンプルとは異なり「ごく短い反響音」が発生いたします。
言葉で表現すると「声がダブっているような音」が最も近いです。
上述のような「ごく短い反響音」は、ご自身での確認がより難しくなってしまうのですが、発生する問題や、改善方法は基本的には全く同じになります。
部屋鳴り 大
まずは追加アイテム無しで、マイクとの距離も何も考えず録音をしてみた音源が下記になります。
※音量注意!
※ヘッドホンorイヤホン推奨
部屋鳴り 大 素音源 ※マイクとの距離:約70cm
まるでお風呂で歌っているかのように、部屋鳴りが発生していますね…。
そして、こちらの音源を用いて簡単にMIXをした音源がこちらになります。
部屋鳴り 大 MIX音源
完全に声の輪郭がぼやけてしまっていて、instと歌声が全然綺麗に混ざっていません…。
また、部屋鳴りが強く発生してしまっている音源だと、部屋鳴りによる声の残響が残ってしまうせいで、ピッチ・タイミング補正を綺麗に行うことができない場合も多いです。
部屋鳴り 中
続いては、先ほどよりマイクと口の距離だけを変えて、録音をした音源になります。
マイクとの距離:約10cm
部屋鳴り 中 素音源 ※マイクとの距離:約10cm
これだけの調整でも、だいぶ部屋鳴りの量が減ったことがわかると思います。
一つ目と同様に作業を行った音源がこちらになります。
部屋鳴り 中 MIX音源
だいぶマシにはなりましたが、所々で部屋鳴りによる残響が目立つ部分があります。
今回の音源はアップテンポで、激し目な曲のためどうにか誤魔化せてますが、ミドルテンポやバラード等のスローテンポの曲はかなり厳しくなってきます。
部屋鳴り 小
最後は、しっかりとマイキングを行って、部屋鳴りを徹底的に減らしたいと思います!
上述の通り、
・マイクと口の距離をできる限り近づける
・マイクの設置場所は壁から遠ざける
まずは、マイクとの距離を更に近づけます。(約3cm)
マイクとの距離:約3cm
部屋鳴り 小 素音源 ※マイクとの距離:約3cm
いかがでしょうか?
少しのアイテム追加と、マイクとの距離を変えただけで、かなりクリアな音質になったと思います。
厳密に言うと「良い録り音」とは言えませんが、部屋鳴りがほぼ消えたことで十分に許容範囲内の音源になりました。
そして、この音源で簡単にMIXをした音源がこちらになります。
部屋鳴り 小 MIX音源
声の輪郭もしっかりしてきて、前の二つと比べると劇的に部屋鳴りが無くなっていることがわかると思います。
ここでもう一度、部屋鳴り大の音源を聴いてみましょう。
部屋鳴り 大 MIX音源
違いが一目瞭然ならぬ、一耳瞭然という感じですね…。
つまり、
録り音の良し悪しでMIXの結果がここまで変わってきてしまうのです。
それが、少し工夫を加えることで劇的に改善されるので、部屋鳴りに悩まれている方はやらない手はありませんね!
是非今回の検証実験を参考に、MIXの天敵『部屋鳴り』を駆逐しましょう!
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回ご紹介したように、いつもの録音に少し手を加えることで録り音は劇的に変化します!
これまで、部屋鳴りが原因でMIX依頼を断られてしまったり、部屋鳴りのせいで良い音源を作れなかった方は、是非一度ご紹介した内容を試してみてください!
それではまた!