D_MIX(@D_MIXing)です!
皆さんは、歌ってみた等で歌を録音する際、
「適切な入力レベル」についてご存じでしょうか?
ないがしろにされやすい部分なのですが、この録音時の音量をしっかり「意識する」と「しない」では、
作品のクオリティに大きな差が発生します!
今回はそんな、
『見落とされがちだけど重要な録音時の適切な入力レベル』について、
具体的な理由を含めて、解説していきます!
音割れ防止方法については、こちらの記事をご覧ください!
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録音時のボリュームはどこで調節するの?
まずは、録音時の入力レベルの調整方法についてです。
基本的に、録音時の入力レベルは、
オーディオインターフェースに付いている「GAIN(ゲイン)」というつまみを回して調整します。
下の画像の赤い丸で囲まれている部分が「GAIN(ゲイン)」になります。
「GAIN(ゲイン)」= DAWへ入力される音の大きさ
であり、
ヘッドホンやイヤホンに返ってくる声の音量を調整する場所ではありません!
歌う際、自分の声の音量が小さくてinstに埋もれてしまっているという場合は、
・「OUTPUT」や「MONITOR」「MIX」と書いているつまみを調節する
・DAW内でinstの音量を下げる
といった方法で必ず音量調節をしましょう!
録音時の適切な入力レベルとは?
まず、歌やギター等、すべての録音時に共通して最も大切なのは、
いかに余分なノイズを少なくするか ということです。
これを、専門用語だと「いかにS/N比(エスエヌひ)を大きくできるか」と言います。
※SはSignal(シグナル)、NはNoise(ノイズ)
※S/N比が大きい=ノイズが少なく純度の高い音源
そのためには、声をできる限り大きく録る必要が発生してきます。
結論から言うと、下記のようになります。
- 声のピーク(最大音量)は約-6dbまでに必ず抑える
- 声の小さい部分もできる限り大きく録れるようにする
画像で見るとこのような形です。
せっかくゲインに注意しながら録音をしても、書き出しで失敗してしまっては意味が無くなってしまいます。
書き出し時は必ず、
「DAW内の全てのフェーダーが0dbになっていること」
をしっかり確認してから書き出しを行うようにしましょう!
ただ、わかっていても、声量や機材自体の問題で思うようにいかないこともあるかと思います。
特に多いのが下の例ではないでしょうか。
Aメロとサビで音量差が大きくなってしまう場合
音域や声量の問題で、Aメロ等で波形が小さく、サビ等の声を張る部分で波形がものすごく大きくなってしまうということもあると思います。
基本的に録音時のGAINは、一度決めたら全て録り終えるまで変えてはいけないのですが、
声が小さくなる場所で、どうしても波形が上の画像のNG例くらい極端に小さくなってしまう場合は、下記の手順で録音を行ってください。
- まず、サビ等の一番声量が大きくなる部分でGAINを調整する
- そのまま、すべてのサビ(声量が大きくなる部分)を先に録音する
- 少しGAINを上げてサビ以外の場所を録音する
※例:サビが-6~-12dbの間の場合、他の部分は-12~-24dbくらい目安で、サビより大きい音量にならないように
こうすることで、音量差問題は大きく改善すること間違いなしです!
ただ、これは最終手段的な方法であるため、この方法を使った音源でMIX依頼をする場合は、
必ずMIX師さんに一番最初に伝えましょう!
その際、「どこが同じGAINで、どこを変えて録音したのか」ということも伝えましょう!
マイクと口の距離は、最初から最後まで絶対に変えてはいけません!
基本的に、宅録の場合は「マイクと口をできる限り近づけること」が必須ですが、
それだと音量差や、音割れの問題が出てしまう場合は、
上記のような「GAINの調整」を行って録音しましょう!
なぜ「マイクと口をできる限り近づける必要があるのか」については、
下の関連記事をご覧ください!
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また、録音時は必ずポップガードを使用するようにしましょう!
様々な種類がありますが、下記のような金属の物がおすすめです!
【上級者向け】コンプレッサーのかけ録り
音量差や、音割れ問題を防ぐ方法として、コンプレッサーを使用する方法があります。
音量を圧縮して、音量差を少なくする機材。
ただ、コンプレッサーのかけ録りは、扱い方を熟知していないと綺麗に収録することができません。
また、一度コンプレッサーで音を圧縮してしまうと、元に戻すことができません。
なぜ入力レベルが小さいとダメなのか?
入力レベルが大きいと音割れしてしまうのでダメということはわかりやすいです。
しかし、なぜ小さすぎてもダメなのでしょうか?
順を追って解説していきます!
まず抑えて頂きたいのは、
録音時に入ってしまうノイズを完全に無くすことはできない
ということです。
これは、宅録でもプロのレコーディングスタジオでも同じで、多かれ少なかれノイズは必ず発生しています。
ここで言うノイズは、「部屋鳴り」や「エアコン、換気扇、車の音」等をはじめ、機材とケーブルを接続した際に発生する、微量のホワイトノイズやハムノイズ等のノイズも含んでいます。
例えば、下のように録音を行ったとします。
歌唱は、元Shated Studio所属の赤沢君に行ってもらいました。
・「夜明けと蛍」赤沢歌唱 OKデータ
波形が無いように見える両端部分にも、実はほんの少しだけノイズは発生しています。
しかし、この場合はS/N比も大きく、波形のピークも-6db以下に抑えられており、MIXを行う上で問題はありません。
では、上と全く同じフレーズで「入力レベルが極端に低い場合」はどうなるでしょうか?
録音時の入力レベルが極端に低い = S/N比が小さい
と言えますが、その例がこちらになります。
・「夜明けと蛍」赤沢歌唱 NGデータ
ご覧の通り、歌っている部分の波形が小さく、すごく見えづらいかと思います。
また、音量もかなり小さくなってしまっており、このままだとMIXが行えないため、行えるように1枚目と同じくらいの音量に強制的に合わせた物が下のデータになります。
・「夜明けと蛍」赤沢歌唱 NGデータ 音量UP
いかがでしょうか?
ここでもう一度1つ目のOKテイクのデータを見てみましょう。
・「夜明けと蛍」赤沢歌唱 OKデータ
比較してみると、波形が無かった部分や、小さかった部分の波形が大きくなってしまっているのがわかるかと思います。
また、音声を聴いて頂くと、常に「サーッ」というノイズが後ろで鳴ってしまっていることがわかると思います。
これは、音量を大きくした際に
歌っていない部分のノイズまで一緒に持ち上がってしまって、歌声がノイズに埋もれてしまっている状態
となります。
このデータを強制的にinstと合わせるとこのようになります。
終始トランシーバーを使って歌っているみたいになっていますね…
録音時の入力レベルが低いと、このような問題が発生してしまい、結果として音質の悪い作品となってしまいます。
これが、
「なぜ、入力レベルが小さいとだめなのか?」
という理由になります。
今回の例はわかりやすくするため、極端にS/N比が小さい音源を例にしています。
しかし、度合いは違えど、このような現象が録音時には常に発生しています。
せっかく歌ってみたを投稿するなら、音質良くクオリティの高いものを投稿したいと誰もが思うはずです。
だからこそ
「録りたい音を、適切な入力レベルで録ること」
をこれまで以上に意識して、録音を行って頂ければ幸いです!
しかし、完璧に取り除けるわけではなく、ノイズの量が多いほど、音質劣化が発生するといったデメリットもあります。
ノイズ除去ソフトは宅録ユーザーの強い味方ですが、限界はあるため、できる限り録音の段階でノイズが入らないように注意しましょう!
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回の内容をまとめます!
録音時の適切な入力レベルは
- 声のピーク(最大音量)は約-6dbまでに必ず抑える
- 声の小さい部分もできる限り大きく録れるようにする
音量差が大きくなってしまう場合は
- まず、サビ等の一番声量が大きくなる部分でGAINを調整する
- そのまま、すべてのサビを先に録音する
- 少しGAINを上げてサビ以外の場所を録音する
※例:サビが-6~-12dbの間の場合、他の部分は-12~-24dbくらい目安で
なぜ入力レベルが小さいとダメなのかというと
- 音量を上げるとノイズまで一緒に持ち上がってしまって、歌声がノイズに埋もれてしまうから
これらを意識するだけで、MIX後のクオリティは大きく変わりますので、是非お試しください!
それではまた!